若手劇作家の新たなる視点
[大会パンフレットより]
戯曲について語り合いたいとずっと思っていました。戯曲の未来を考えるような語り合いです。その相手として劇作家ほどうってつけの存在はいないでしょう。と言うか、劇作家しか相手になってくれる人はいないでしょう。劇作家以外で戯曲を読んだり、書いたり、楽しんだりしている人なんて日本にいるのでしょうか。小説や漫画や詩はいるでしょう。戯曲はきっといないでしょう。俳優でも戯曲を日常的に読んでいる人は少ないと思います。戯曲はこのままうつろい消えていくものなのでしょうか。そんなことを考えてます。そんなことを話し合いたいです。
ひとつの場所に全国の劇作家が集まる。こんなにわくわくすることはめったにないです。残念なのは隣でやっているマキノノゾミさんたちの企画を見られないことです。こっちよりも面白そうで悔しいです。面白さで勝てないなら別のところで勝負します。若さ。30代の中途半端な若さ。観に来てください。 (柴 幸男)
対決!「劇作の鉄人」(全3回)
[大会パンフレットより]
劇作家は漠然と台詞やト書きを書いているわけではない。いかに自然に、いかにドラマチックに劇を構築するのか? そこには確実に技術がある。この企画は鉄人チーム(マキノ・鐘下)と挑戦者チーム(鈴木・長谷川)がその技術を競うというイベントだ。
設定やお題、条件を客席からも意見をもらいながら決める。そして初日はその条件を元にそれぞれがチームで話し合いながらプロット(枠組み)を決めてもらう。技術はもちろんのこと、チーム力も試される。二日目は台詞を書いて行く。
その間、それぞれのパソコン画面をモニターに映しながら司会の土田とゲストによる解説、そして劇作にまつわるトークなども繰り広げる。
そして最終日。完成した台本のリーディング。読み手はスペシャルゲスト達。それぞれの作品についてのプレゼンの後、観客を含めての投票。果たして鉄人チームは挑戦者を退けられるのか? それとも挑戦者たちが鉄人を破るのか? (土田英生)
シニア演劇温泉合宿のススメ
[大会パンフレットより]
江戸時代の大相撲で大関が最高位だったころ、温泉番付では、関脇に付けていた城崎温泉。相撲、温泉と来れば、人生の先輩であるシニア世代にご登場いただかねばならないだろう。そういえば、近年シニア演劇は全国的に花盛りといっても過言ではない。シニア劇団を集めた演劇祭は、人生の深みと、年齢を重ねたゆえのすっとぼけた味わいに溢れている。そして、これから先、日本はどんどん高齢化が進み、シニア演劇の未来は明るい。
一方で、演劇専用ホールを持つ岩手県西和賀町では、温泉組合が主導し、若者を集めて温泉合宿で演劇を作り、上演、発表するプロジェクトも静かに続いている。
この二つを一緒にしてみたら歴史的にも地理的にも一気に広がりがでるのではないか?
シニアと温泉を結びつけた演劇の未来は、ここ城崎温泉から始まり、現代の芸術温泉番付においては、初代の横綱を狙っているのである。 (くらもちひろゆき)
街角リーディング@カフェ木もれび
[大会パンフレットより]
「こうのとり短編戯曲賞」
豊岡市のシンボルであるコウノトリ。ヨーロッパでは、赤ん坊を運んでくる鳥と言い伝えられています。今回、豊岡を舞台に劇作家大会を行うにあたり、コウノトリのように、次世代の劇作家を産み育てるような戯曲賞があればふさわしいと企画されました。
100本を超える応募の中から6人を選考。豊岡・城崎温泉に滞在取材をしていただいた上で戯曲を創作してもらい、最優秀作品は、劇作家大会期間中、城崎温泉のあちこちで行われる街角リーディングの一般投票にて決定します。
6/15(日)の大会閉会式で最優秀作品は発表され、女優・根岸季衣さんによるスペシャルリーディング公演が行われます。
滞在取材による戯曲執筆は、地域と劇作のコラボレーション。例を見ない“戯曲賞”の誕生です。 (松枝佳紀)
iaku公演『人の気も知らないで』
[大会パンフレットより]
まだ痛みがあるうちは、そこにある傷のことばかり考えてしまうものだ。傷が癒えれば痛みのことなどすっかり忘れてしまう。もしくは日常に追われるなかで徐々に痛みが消えていくこともある。人間の「忘れる」機能には、本当に感謝と驚異でいっぱいである。これらは、外科的な傷だけの話ではない。僕たちは、誰しも傷や痛みを恐れ、そして、忘れながら暮らしているのだ。
「人の気も知らないで」は、他者が抱える傷への想像力の話。あれから、僕はどんな作品をつくるときも“痛みと距離感”のことを意識せざるを得ない。「あれから」っていうのは、東日本大震災かもしれないし、中越地震かもしれないし、スマトラ島沖地震かもしれないし、米同時多発テロかもしれないし、雲仙普賢岳噴火かもしれないし、阪神淡路大震災かもしれない。記憶は連動する。誰かが抱える傷・痛みとの物理的・心理的距離、そして流れる時間について、僕らは常に問われている。 (横山拓也)
アトリエ劇研プロデュース『舟歌は遠く離れて』
[大会パンフレットより]
以前韓国に住んでいたわたしは、死期が近づいた父に会うために釜山から福岡へ船で渡った。わたしがやって来たことで久しぶりに家族全員が揃い、それで安心したのかその数時間後に父は亡くなった。慌ただしく葬式を終えたわたしは再び船で韓国へ戻る。その船中、わたしはいったいどこへ行ってどこへ戻ろうとしているのか分からなくなるときがあった。父の見舞いのつもりで死に目に会い、それはそれで良かったと思うのだけれど、その帰路わたしは何を背にして船に揺られているのか。あらゆる「何のために」が一瞬宙に浮いた気がして、強く戸惑ったことを覚えている。
船に乗るのは生ける者だけではない。カフカの未完の作品に、小舟に乗せられた死体が川をつたってある町にやってくるというものもあるし、三途の川を渡る船もある。生き死にを考える舞台としての「船」がある。この作品を同じ京都を拠点に創作する山口茜さんの演出で、そして劇団☆新感線の村木さんはじめ実力派の俳優たちのユニークなアンサンブルによってどんな舞台になるのか、貴重な公演となることは間違いないと思っている。 (田辺 剛)
AIRの過去・現在・未来
[大会パンフレットより]
城崎国際アートセンターは、日本最大級の舞台芸術に特化したアーティスト・イン・ レジデンス(AIR)施設です。越後妻有、瀬戸内の国際芸術祭のディレクターである北川氏、キジムナーフェスタの芸術監督である下山氏、フェスティバル/トーキョーの初代プログラムディレクターであった相馬氏を迎え、豊岡市の中貝市長とともにAIR(滞在型制作)について考察します。日本においてのAIRの歴史は、舞台芸術より美術の方が深いですから、最初は美術の側面から、北川氏にお話しを伺い、その後、全員で意見を交わしあいます。質問も大歓迎です。(羊屋白玉)
3年と19年──震災と演劇を考える
[大会パンフレットより]
「演劇を無力と思ったことは、未だかつてない」
これは、故秋浜悟史氏の言葉である。阪神淡路大震災に打ちひしがれながらも、県立ピッコロ劇団の代表として、被災地激励演劇活動を指揮した氏の言葉は、東日本大震災を経た今でも、重く、そして輝いている。
東北の岩手から関西へ、その演劇活動をつなげた秋浜氏に倣い、震災後の東北と関西をつなげ、未来に向けた演劇の可能性を拡げたい。
東日本大震災から3年、阪神淡路大震災から19年。2つの震災後どのような演劇的支援が行われたのか? また、その有効性は? 震災を契機に始まって、現在継続している演劇的な活動はあるのか?
演劇と震災の関わりを考え、これからの指針になるようなことが導き出せるのか探るシンポジウム。 (くらもちひろゆき)
矢内原美邦「初心者向けの朗読ワークショップ~身体と言葉~」全2回
[大会パンフレットより]
舞台制作において振付家としてそのキャリアをスタートした私がいまこうして演劇作品をつくることにチャレンジしている理由は、それがダンスだとしても、演劇だとしても、身体と言葉の関係性について、より多くのことを探りたいと思っているからです。「僕は未だ嘗て演劇の本質は言葉に在りと云つた覚えもなく、演劇の視覚的意義を否認した覚えもない」これは岸田國士氏の言葉ですが、こうした発想から、どのように身体が言葉にアプローチできるのか、または言葉が身体になにを語りかけることができるのかについて、考えてみたいと思っています。
今回は朗読をベースとしたワークショップをやります。物語というよりは純粋に言葉を使いたいと思っています。どこまでが身体で、どこからが言葉なのか、そんなことを考えながら、参加者のみなさんには、意味としてとらえられた言葉が、イメージとして身体に還元されていくような経験をしてもらえたらいいなと思っています。 (矢内原美邦)
街角リーディング@街中
[大会パンフレットより]
《観客投票であなたが選ぶ!》
最終候補作6本すべてをご覧になった皆さんの投票で、こうのとり短編戯曲賞最優秀作が決まります。こうのとりスタンプラリーに参加しよう!
リーディングを聴いてスタンプをゲット 。イラスト地図ページのスタンプ欄がすべて埋まれば、いざ投票!
スペシャル座談会「近代劇・新劇・現代劇」
[大会パンフレットより]
まさに劇作家大会に相応しい重鎮御三方の鼎談企画です。
戦後を生き抜いてきた劇作家の目に映る現代演劇は、果たしていかなるものへと変質していっているのか。演劇史に縁遠い私に敢えて司会を任せたいと劇作家協会会長の坂手洋二氏の目論みが何処にあるのか今のところまだハッキリとはわかりませんが、激流の中、時代を見つめてきた御三方の眼差しに少しでも触れられればと期待は膨らむばかりです。
あまり堅苦しくなく、カフェーで語らうような時間になれば幸いと思っております。滅多にない機会なので、是非気軽に覗いて頂けたら幸いです。 (長塚圭史)
*福田善之が欠席となりましたことを、お詫び申し上げます。
対談:佐野史郎×林 海象「映画と演劇」
[大会パンフレットより]
1986年にお互いの映画デビュー作である、モノクロ・字幕映画『夢みるように眠りたい』で組んだ、佐野史郎、林海象監督。以来、同時代を疾走してきた二人による、ジャンルと表現の垣根を越えたトーク。
シェイクスピアシアターから唐十郎の赤テントでの弾ける活躍、そして映像の世界へと越境していった、佐野史郎。アンダーグラウンドの精神と戦後の青春を見つめるみずみずしい感性、音楽への想い、そして故郷・松江への愛情。自主映画の世界から一挙に日本映画の中心に躍り出た、林海象。「探偵」へのこだわり。アジアじゅうを自分の庭とする国際感覚。そして京都造形大学で教鞭を取り、世代をクロスオーバー、映像とライヴの出会いをプロデュースする探求心。
原点を共にする二人が、見続けてきた夢、そしてこれからについて、縦横無尽に語り尽くす、スペシャル・トークショー! (坂手洋二)
「アジア女性舞台芸術会議」実現に向けて
[大会パンフレットより]
1992年に故・如月小春さんが始動させた「アジア女性演劇会議」を、今、再生させるべく、アジアで活躍する女性アーティストをゲストに、アジアの女性による舞台表現の歴史と現在・今後の展望や課題・再生の意義について話し合います。今回は、マレーシアから、国際的に作品を発表している現代美術家Sharon Chinと、クアラルンプール老舗の劇場、ファイブアーツセンターのマネージャーを勤めるJune tanの若きふたりをお招きします。 (羊屋白玉)
智春「ジャグリングワークショップ」「身体で劇作するワークショップ」
[大会パンフレットより]
シルク・ドゥ・ソレイユ登録アーティスト。サーカスをベースとした表現活動で数々の賞を獲得しているクラウン・演出家の智春によるジャグリングワークショップと身体で劇作するワークショップ。
キコ/qui-co『Butterfly』(公開稽古、ワーク・イン・プログレス)
[大会パンフレットより]
7月3日より東京は代々木上原のITO.M.SUTUDIOにて本番を控える、キコ/qui-co.第5回公演『神の左手』のワーク・イン・プログレスです。
しかし、今回は劇作家大会2014仕様に改編し、タイトルも『Butterfly』とします。つまり本番とはまったくの別バージョンとして上演いたします。城崎でのみ実存するここでだけ公開される物語となります。テーマは「運命」と「セックス」。生き物が避けられない死と生の営みについての物語です。
舞台は関東近郊の科学研究学園都市。老舗の葬儀社。人の死をメシの食い種にする男達のハードボイルドな日常。女達は彼らと生活を共にし、すれっからしの恋をする。その日々は明るい光に照らされていた。しかし突如として多発する原因不明の死亡事件に葬儀屋の彼らは巻き込まれていく。彼と彼女を待ち受けていた壮絶な愛の運命とは?
ソリッドな脚本にクレイジーな演出でストレートに紡がれる会話劇。キコ/qui-co.はロックと文学を同時にドロップします。 (小栗 剛)
こうのとり短編戯曲賞候補作 一挙上演
劇作家女子「大」会!
[大会パンフレットより]
活躍が期待される各地の女性劇作家と、劇団主宰・劇作家・俳優・エッセイストなど多岐にわたって活躍する先輩劇作家わかぎゑふによるトークイベント。
ゲストは「全日本おばちゃん党」で活躍する谷口真由美さん。お茶を飲みつつ、お菓子を食べつつ、日々の思考、ジェンダーのこと、恋愛のこと、劇作におけるプライドや、まだ形を与えられていないたくさんの野望について、時に高尚に、時にミーハーに本音を語ります。世間のいわゆる「女子会」とはひと味ちがう劇作家女子会。遊びに来て、私たちを知ってください。皆様のお目にかける作品の奥には、こんな一人の人間がいます。 (オノマリコ)
対談:前川知大×長塚圭史「演劇は絶滅危惧種か??」
[大会パンフレットより]
演劇を仕事にしていると話すと、大抵はとても驚かれる。世の中では、演劇はまだまだマイナーな存在で、コウノトリのごとく目の当りにする機会は少ないらしい。でも、演劇はそんなに珍しい絶滅危惧種なのか。
前川知大は劇団イキウメを主宰。小劇場で注目作を発表する一方で、今年は市川猿之助と佐々木蔵之介主演のスーパー歌舞伎を手がけ、演出家・蜷川幸雄に戯曲を提供する。長塚圭史は主宰する演劇ユニット阿佐ヶ谷スパイダースでのオリジナル作品にこだわりながら、市川海老蔵・宮沢りえ・松雪泰子・田中哲司らとも意欲作を生み出している。小劇場から大劇場、そして歌舞伎まで縦横無尽に飛び回る2人が、今なぜ演劇にこだわり続けるのか? 演劇の力とは何か。
豊岡市では、コウノトリにも街中でふと出会えるという。演劇を絶滅危惧種にしないために語りあう。(田窪桜子)
松本 修ワークショップ「カフカの作り方」
[大会パンフレットより]
私は戯曲を上演するのとは別に、カフカの小説のような人間の喋る台詞が少ない、頭の中の想念や人や物のビジュアル・イメージの記述の多いテキストから舞台を作る作業を好んでやっています。もちろん優れた戯曲の舞台化も楽しいですが、舞台にすることなど想定されていないテキストを素材にするのもなかなか楽しいものです。この作業の多くは俳優たちとの共同作業となります。一つの素材を時間をかけて、俳優たちと一緒になって、ああだこうだ言い合ったり、身体を使って様々なやり方で場面を立ち上げて行きます。戯曲の制約から自由になれますし、俳優たちのとんでもない解釈や表現に出会うことも喜びです。今回は「えっ、これって舞台でどうやるの?」と思うようなカフカの短編小説を用いて、色々なアイディアを出し合いましょう。また、ひとつのサンプルとしてMODEでじっさいに作った映像もお見せします。演劇表現の可能性を探る時間です。(松本 修)
《谷 賢一×山崎 彬》企画『恋のマジック・アワー ~私のママは食人鬼~』(上演)
[大会パンフレットより]
我々の企画は、滞在制作です。英語で言うと、アーティスト・イン・レジデンス。玄武洞公演内の青龍洞という天然のトンデモ洞窟からインスピレーションを得て、東の谷賢一、西の山崎彬という2人の劇作家が、共同執筆・演出します。
実際、下見に行ってみて、玄武洞・青龍洞のスケール感に圧倒され、絶句しました。コレハ、トンデモナイ。コトバニ、デキナイ。その、まだ言葉にならない印象を、4日間という短い滞在期間ではありますが、煮詰めて、書いて、演出して、上演する。すべて現地で行います。なので、タイトルはあくまで仮です。あのとんでもない天然洞窟にどうやったら勝てるか、いや、活かして共演できるか? 苦悩の4日間がはじまります。
参加俳優も、関東から2名、関西から2名。東西の個性と感性が、玄武洞に刺激を受けて、弾けて混ざれ! ご期待くださいませ。 (谷 賢一)
世田谷シルク『コウノトリの温泉めぐり』(上演)
[大会パンフレットより]
私の振付に、セリフを解体した単語の踊り《ホコリズム》というものがあります。
「歩く」「しゃがむ」などシンプルな動きを同時多発的に使いながら、単語で物語を紡いでいくという方法です。普段は演劇公演の中、約5分~10分と非常に短い時間のなかで行われますが、観客からも大変好評なパフォーマンスのため、今回はこれをメインに創作していきたいと思います。
そしてタイトルは、『コウノトリの温泉めぐり』。城崎といえばコウノトリと温泉街にある7つの外湯です。これらのキーワードと青龍洞という自然の偉大さを武器に、幻想的な空間を作り上げます。
夜の玄武洞公演はなかなか訪れる機会はありません。晴れていれば星も見えることでしょう。ダイナミズムで繊細なホコリズム、どうぞご期待ください。(堀川 炎)
13日の他の企画
(写真は12日のページ)
羊屋白玉ワークショップ「豊岡の風土とfoodを巡り、創り観せる四日間」(第2回)
平田オリザ「戯曲セミナー」(第2回)
俳優向け戯曲講座「戯曲はこう読め!」(マキノノゾミ)
復活! ゴールド劇場特別公演
ろりえ『俺たちの劇 inspired by 屋根裏』(上演)
⇒ 大会3日目の写真(2014年6月14日)